パキスタンから昨年帰国した私はこれからはNPOやNGOの活動を積極的に行いたいと思い、ACCUを退職して新たに国際識字文化センター(ICLC)という国際NGOを東京に設立した。そして国内の教育専門家や大学院生などに識字教育の方法論を伝えながら始めたのが、
(1)アジア各国の識字教育の専門家の養成と識字プロジェクトの創設
(2)識字を通じてカシミール国際平和絵本の共同出版
(3)アジア地域ーカスールなどで進行している環境問題への識字協力
(4)総合学習のための子どもや大人の自立のための絵文字による地図作り(日本の小学校の教師や生徒対象)
(5)ヒューマンリテラシ-を通じたコミュニケーション方法論の実践を幅広く推進し始めた。
識字ワークショップもテーマを代えながら5回開催され多数の参加者が出席した。
私としては全世界の途上国の基礎教育や識字教育を理論と実践面から同時にすすめる国際的な教育NGOとして立ち上げたのであるが、パキスタンから知り合いの著名な女性大臣(パンジャブ州)や中国の専門家などが早速会員になりたいと申し込んできた。
考えてみるとカシミール問題は、インドとパキスタン両国の複雑な民族、宗教、政治、経済や社会問題あるいは武器の商人のや国際的な利害関係などあらゆる複雑な根が無限にからみあって存在している。カシミールにおける軍事的な膨大な予算は両国の社会や人間開発の構造に深く影を落としており、両国の宗教や資源問題をからめたお互いの憎しみあいはすさまじいものがある。これが核競争の中でどのように火がつくか全く予断を許さない。パキスタンのある友人は「この問題は両国の人々がみんな絶滅したとしても絶対に解決のあり得ないもの。永遠に解決はない。」と語っていたが、その通り、その根たるや余りにも深く、憎しみあいの構造はあまりにも複雑で、複雑な民族、宗教、文化をもたない日本人の哲学や方法論ではとても歯がたたない問題だということはもちろん承知している。
日本では、隣国の韓国や中国との過去の歴史事実についての教科書の内容ひとつとってみても、日本人がどれだけ現在や将来の子供たちに普遍的な思考や哲学を伝えていこうと努力しているのか考えると疑問なところが多い。忘れやすい民族と言われる日本人が過去に目をつぶり国際社会でなにができようか?しかしそれだからこそ21世紀には新しい挑戦が必要であり、そのためのインドとパキスタンのカシミールを題材とする共同出版計画が考え出された、そして構想は1998年のIBBYのニュデリーの会議で発表し、多くの賛同を得て両国の画家と作家から2種類のドラフトの完成版を受け取った。そしてこの内容をさらに討議するため2001の2月に東京で5カ国の関係者が集まって出版編集会議を開催した。これは32ページのカラフルな絵本で英語、ヒンディ語、ウルドゥ語、カシミール語など4言語で出版が予定されており、文字通り世界でも画期的な共同出版になるのではないかと思っている。またアフガニスタンの難民の子どもたちへの新しい教育計画も多様な形で始まろうとしている。